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提言「わが国の経営学大学院における教育研究の国際通用性のある質保証に向けて」ポイント|日本学術会議

(1)わが国の大学院制度、専門職大学院制度に起因する課題わが国の大学院制度の中でプロフェッショナル教育の位置付けが曖昧で、専門職大学院と既存の学術大学院の違いが分かりにくく、教育の質保証と学位の国際通用性を図る上で支障をきたす。また、専門職大学院における研究活動や学部・学術大学院との連携を妨げる制度が、逆に専門職大学院の教育の充実と修了生の能力向上の妨げになっている。

(2)わが国の認証評価制度に起因する課題ビジネス教育分野では、学術大学院が授与する修士レベルの学位名称も英文ではMBA (Master of Business Administration)となっており、海外から見たときに専門職大学院制度の存在を見えにくくしている。専門職大学院は分野別認証評価も受ける必要があるが、機関別と分野別の二つの認証評価制度は、重複面も多く、大学や評価機関に過度の負担を負わせている。また、わが国の認証評価は設置基準への適合性検証という形式面に力点が置かれ、海外のように第三者評価を通して教育研究の質向上と質保証を図るという視点が相対的に脆弱で、評価結果や学位の国際通用性に支障をきたしている。ビジネス教育分野では、教育の質を評価する国際標準や国際的な枠組みが定まっていないことや、わが国では複数の評価機関の間で評価基準や評価方法にバラツキがある。

(3)社会、産業界に起因する課題わが国の産業界は、企業等を取り巻く経済環境がグローバル化しているにもかかわらず、雇用制度など組織内の各種制度・システムは独自性・個別性が強く、人材の流動性に対応できていない。このため、わが国の産業界は欧米の企業とは異なり、経営学大学院の修了者の能力を適切に評価し、有効に活用する機会を失っている。また、経営学大学院における学術成果、ビジネス教育の効果、教育の質保証への取組みに無関心な企業が多く、経営学大学院を活用する機会を見出せず、企業は自ら人材育成の幅を狭め、競争力を失おうとしている。

(4)わが国の大学院に起因する課題学術大学院では特定の指導教員の下で研鑽を積むことが一般的で、教育カリキュラムを開発するという意識を徹底して来なかった。課程における教育を重視している経営学大学院においても学生に身に付けさせるべきコンピテンスを明文化し、それを付与する適切な教育プログラムや教育方法の開発の仕組みの整備が十分ではない。適切な教育プログラムよって教育の質を保証し、学位の国際通用性を担保する取組みが不足している。その原因の一つには、わが国の経営学大学院は欧米に比べて規模が小さく、人的側面・財務的側面を含め、大学内での存立基盤が脆弱であることが挙げられる。

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